駐夫です。
今日から、少しテイストを変えた切り口で不定期シリーズを始めたい。
タイトルは「キャリア形成とキャリアコンサルタント理論」。
というのも、私は(一応)キャリアコンサルタントの資格保有者である。国家資格ではあるが、日本にいないので、現状では生かせない。まして、最近は「自分で自分のキャリアをコンサルしたい」とボヤくこともたまにある。
それなりに勉強したことを忘れないためだけでなく、現在研究中のテーマとコラボするがゆえ、少しばかりまとめてみようと思ったのがきっかけだ。
記念すべき初回は、ファンの多いクランボルツの「計画的偶発性理論」を取り上げたい。
Contents
計画的偶発性理論とは
スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱した理論。確立されたのは、ちょうど20年前の1999年のこと。比較的というか、かなり新しい部類に入る理論だが、私も好きな理論のひとつである。
一言でまとめると「個々人のキャリアは、思った以上に偶然起きた出来事に左右される。そして、キャリア形成上、より望ましい方向に影響を与えることが多い」というもの。極めて、ポジティブな考え方で、いかにも米国人にウケそうな理論と言えようか。
この理論が登場した背景には、インターネットの出現などで世の中が激しく動き、変化する下では、従来の「社会的学習理論」では対応できないということがある。達成目標を据えて、そこに向かって邁進していくことで、キャリアを形成する社会的学習理論では、激動する現実世界で姿勢が硬直化する可能性もある。加えて、がちがちに目標を据えるがゆえに、意外な望外な展開が出てきたら、そのチャンスをみすみす逃してしまうことにもなりかねない。
そうした流れを受け、クランボルツは予期せぬ出来事、人との出会いを重視し、それを自らのキャリア形成に取り入れることで、より良き将来を築けると考えたのである。要は、キャリア形成は決して硬直化したものではなく、偶然な変化を柔軟に受け入れることで、自らのキャリア形成は良い方向に行きますよ、ということ。
大切にすべきなのは、人との出会いを含めた偶然の出来事である。
理論を支える5つのスキル
クランボルツは、偶然の出来事を個人のキャリアに活用するために必要なスキルを5つ指摘する。
それらは、①好奇心 ➁持続性 ③柔軟性 ④楽観性 ⑤冒険心
偶然の出来事、出会いを自らが望むキャリアにつなげるには、新たな学びの機械を模索し(好奇心)、失敗しても努力を続け(持続性)、目標や状況を変えるのをいとわず進んで取り組み(柔軟性)、新たなチャンスは実現できると確信し(楽観性)、結果を予測できなくても恐れず行動する(冒険心)ことが重要だと唱えた。
私自身の捉え方
さて、駐夫になって1年半の私。妻から、米国赴任の話を初めて聞いた時は、とんでもなく面食らった。かようなことは細々と聞いていたものの、本当に実現するとは考えてもいなかった。
悩みに悩んだ挙句、結局は休職同行することを決断した訳だが、その際、この理論をいくばくか思い出した記憶がある。
まさに、予測できない出来事が起き、その変化を柔軟に受け入れ、新たな機会と捉え直し、より良きキャリア形成に繋げていくということだ。45歳で最前線から撤退するのは、ピンチとみる向きもあろう。ある世代より上は、そうとしか考えられないはずだ。
しかし、ピンチはチャンス。そもそも、私自身どこまでピンチと考えていたかは怪しいが、すべてを良い方向に流れていると信じ込み、良い方向にするために、何をしたいのか、何をすべきか、ということを考え、渡米の準備を短期間ながら終えたつもりだ。
米国に来てから、時にはキャリア形成について漠然とした不安にさいなまれることも多々あったことは事実だし、これからも再発するだろう。
その時、心の支えになるのは、この「計画的偶発性理論」に他ならない。この考え方にのっとって、生きている今、今後のキャリア形成に有益となる機会や、人との出会いを極めて大切にしている。偶然の出来事を確実に自分のものとし、力に変えていく。
そして、諸々の条件が見事に合致し、成就した際になってはじめて「これまでの偶然は決して偶然などではなく、最初から計画されていた偶然だ」という心境になると思う。
悲観主義者の私が渡米して、ポジティブシンキングになれたのは、クランボルツ様のおかげだ。他にも感謝しなければいけない理論構築者がいるので、追って紹介していきたい。