2020年の出来事

解き放たれた思いに溢れる 米大統領選、バイデン氏勝利

 駐夫です。

 3日投票の米大統領選。7日土曜の11:30am前、CNNが最初に「バイデン当確」を打ち、他メディアも追随。最後のFOXをもって「マスコミ辞令」は出そろった。

 

 現職は様々な抵抗を模索し、実行に移し、何としても負けを認めようとしない姿勢を貫くが、遅くともサンクスギビング前には、何らかの形で敗北宣言をする形に追い込まれるであろう。周辺の離反はどんどん進んでいく。

 一度流れができれば、いかに現職大統領といえども、もはや止められない。何しろ、数字がすべてを表しているのだから。徹底抗戦を貫き続けても、各国のリーダーはバイデン次期大統領への祝意を続々と示している。国内からも、国際社会から見ても、権力移行に向けた道のりは着実に進んでいく。選挙結果に基づき、政治は冷徹な一面を見せながらも、前に歩んでいく。

 民主主義国家において、選挙はその仕組みを維持する上で、もっとも重視すべきであり、されなければいけない手立てのひとつ。自らも4年前に選ばれたことを完全に忘れ去り、何ら根拠を示すことなく、その不当性を声高に訴えるという、およそ許しがたく、信じられない言動はあまりにも目に余る。

 いまだ唯一の超大国として君臨し、世界各国に民主主義の価値観を広め、体制を根付かせてきた米国のトップとして、醜悪な姿をこれ以上さらすのは、勘弁願いたい。

 世界最大級のパワーを持つ肩書き、記号を担った人物は、政治的な賛否や評価はもちろんあれど、威厳に満ちた所作、品格と風格ある立ち居振る舞い、風圧を感じさせる空気感に満ち溢れ、長年にわたり地球上のリーダーとして、各国から一定の敬意を持たれてきた。

 国家の前に己と、ファミリーがあり、建国時の先人が夢と理想に燃えて、侃々諤々の議論を繰り広げた結果の産物である合衆国憲法を時に無視。聞くに堪えない、読むに堪えない汚らしい言葉を次々と吐き捨て、政敵などの相手をののしり、攻撃を4年間続けてきた。起用したメンバーは次々と離れていき、暴露本を出すに至った。

 合衆国大統領の権威を著しく落とし、米国の子どもたちからも「なりたい仕事」としての人気も下がったに違いない。それだけでも、極めて罪深い。

 自らを支持する勢力、支持しない勢力を悪意を持って明確に区分けし、徹底的に揺さぶり、落とし込む。その結果、見事なまでに国民は分断され、それぞれが憎悪をぶつけ合うようになってしまった。

 経済は順調とはいえども、国家としての総合力は低下傾向にあり、世界から優秀な人材が集まってやまない米国の姿からは、少しづつかけ離れているように感じる。移民政策ひとつとっても、そうだ。

 さて、前日はNYやDCをはじめ、全米の繁華街には多くの人が喜びの表情を浮かべ、歓喜の声を上げ、各々の気持ちを爆発させ、そうした思いをその場に居合わせた人同士、シェアすることによって、待ち望んでいた新時代の幕開けを確信したことだろう。

 残念ながら、NYタイムズスクエアに行くことはできなかったが、自宅周辺でも祝賀パーティーをしているファミリー宅に遭遇できた。彼、彼女らの面持ちが忘れられない。カメラを向けると、ピースサインをくれた。

 

 外国人の私でも、感じざるを得ない、この解き放たれた、解放されたような感情はいったい、どこから来るのだろうか。

 鬱屈し、鬱積し、どことなく澱み切っていた国が、いま新たなステージに邁進していくような思い。我が国が降伏し、第二次世界大戦(太平洋戦争)が終わった報に接したニューヨーカーが、タイムズスクエアで感情を爆発させている写真を何度か見たことがあるが、それに近いものがあるのだろう。

 バイデン、ハリスのスピーチの端々に込められた、分断解消に懸ける揺らぎなく、熱い思い。トランプ支持者に向けた言葉も散りばめられており、彼、彼女らの琴線にも触れたのではないか。もはや対立なぞしている場合ではない、一刻も早く双方を理解し合い、政治を前に進めていこうとの宣言に、外国人である私の心にですら、大いに響き渡った。

 

 私が渡米した2017年冬、トランプ政権はちょうど1年目の最終盤だった。就任式で、どうみても少ない人数を大げさに言い切り、各メディアの報道を「フェイクニュース」などという言葉で一刀両断に切り捨てた時は、メディアの人間としても衝撃的で、驚きを隠せなかった。

 その言葉は日本でも瞬く間に広まり、私も幾度となく面と向かって言われたことがある。米国メディアも、親トランプ、反トランプ、中間とはっきり区分されてしまい、それぞれがその方向性を強めていき、選挙報道を巡っても旗幟を鮮明にしていた。

 この4年間のそれぞれの記者活動は、信念に基づいてのものであろうから、努力は評価したい。今後は双方とも冷静になり、以前同様、腰を据えた報道になってもらいたい。

 次期政権に望むことは、まずもってコロナ対策。バイデン本人も力強く宣言していた。マスク着用の効果が実証されているにもかかわらず、長らく付けることなく、挙句の果てに罹患してしまったという笑えない話はもうおさらばだ。

 

 あまりにも進んでしまった激しい分断に、コロナ禍への見解の相違もあって、例のない選挙戦が繰り広げられた。投票率は過去にないレベルとなるぐらい、米国市民の関心・意識は高まった。当確もここまで遅れるのは異例のこと。だが、すべては終わった。

 たいていの人が一度は憧れ、その魅力がもたらす磁力で、世界の人々を惹きつけてやまない国、米国。

 再び、その輝きを取り戻してほしい。

  

 

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